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本や映画、舞台の感想をつらつら書いています

「推しは推せる時に推せ」とは言うけれど

久しぶりの更新になってしまいました。仕事のストレスと向き合い、引っ越しをしたりして読書をする習慣が消滅しかけていましたが、最近頑張って復活させようとしています。

さて。このブログでは読書と演劇の感想をつらつら書いてきました。
私の演劇生活の中心に来るものは劇団四季や宝塚のような華やかなで誰もが知っているものではなくて、小学4年生の時に心動かされてから、演劇集団キャラメルボックスでした。

そしてこれ。昨年あたりからtwitterでよく見かけた言葉です。

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「推しは推せる時に推せ」

自分の応援している人が、自分の好きなものが、永遠にこの世にあるなんてことはなくて、応援したいと思ったときに、好きだ!と思ったときに素直に、心のままに行動するべきだ、ということですよね。
「本当にそうだなぁ」と思って、特に大好きなモーニング娘。’19は卒業・加入をものすごいスピードで繰り返しているので、オタク度を加速させていたところでした。
そんな矢先。5月31日夜。
演劇集団キャラメルボックスが突然、活動休止を発表しました。

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これが発表されるちょっと前に、劇団初期の代表作、「ナツヤスミ語辞典」を六本木の俳優座劇場で観劇したばかりでした。
キャラメルらしい疾走感と爽快感。新人さんたちの可愛さと緊張感に対する、ベテラン団員さんの安定感と芯の強さ。それをホームの池袋サンシャイン劇場よりもキャパの小さな、距離感の近いところから楽しめるなんて最高!!と幸せを噛みしめて、twitterで出演者の舞台裏話的なつぶやきを楽しんでいました。

 

「推しは推せる時に推せ」。この言葉を見て、推したいものには推せるだけ、気持ちの分だけ推してきたつもりです。何事も永遠ではない事は分かっていても、「推せなくなる」この喪失感はどうしたもんだろうか、と思うわけです。
親友が転校してしまった時ような、大切な人が亡くなった時のような、大事にしていた物を無くした時のような・・・
唯一の救いは、「解散ではない」ということ。活動の休止、であって解散ではない。
劇団の俳優さんたちは、劇団外での活動や、客演での活動も多くて、実績がある人ばかり。

 

芸能人、劇団、本、好きなお菓子、大切な人、どんな「推し」でも、応援したい、好きだ!と思ったら心のままに。この機会にキャラメルボックス以外の劇団さんもチェックしつつ、活動の再開を心待ちにしています。

『無伴奏ソナタ』を観てきました(演劇集団キャラメルボックス)

キャラメルボックスのグリーティングシアター「無伴奏ソナタ」を観てきました。

www.caramelbox.com

2012年の初演、2014年の再演ともに観ていなかったので、今度こそはと思い、かといってお金もそんなにないので当日のハーフプライスチケットを購入。久しぶりの2階席でした。遠いけど、ダンスシーンはきれいに見えました。舞台セットはいつになくシンプルです。でもこれが視覚より聴覚に集中するために大事な所。

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以下、ネタバレも含みます。6月終わりの大阪公演まで、これから観るよーという方はぜひ読まないで、ブックマークだけしていただけると…

 

さて。無伴奏ソナタ

アメリカの小説原作のため、主人公はクリスチャン(これが多田直人さん)。
(個人的にカタカナの名前が覚え辛いため、今回も若干混乱しました)

 

すべての人間の職業が、幼児期のテストで決定される時代。 クリスチャン・ハロルドセンは生後6ヶ月のテストでリズムと音感に優れた才能を示し、2歳のテストで音楽の神童と認定された。
そして、両親と別れて、森の中の一軒家に移り住む。そこで自分の音楽を作り、演奏すること。それが彼に与えられた仕事だった。彼は「メイカー」となったのだ、メイカーは既成の音楽を聞くことも、他人と接することも、禁じられていた。 
ところが、彼が30歳になったある日、見知らぬ男が森の中から現れた。男はクリスチャンにレコーダーを差し出して、言った。 「これを聴いてくれ。バッハの音楽だ……」

 既成の音楽を聴くことを禁じられ、ひたすらに音楽を生み出す「メイカー」となったクリスチャン。ある日バッハの「無伴奏ソナタ」を聞いてしまったことで、再教育センターに行くことになる「第一楽章」

一転「第二楽章」の舞台は小さな町のバーでの一幕。店主役の岡田達也さんと、「お客さんの9割は私目当て」と豪語するウエイトレス役の大滝真実さんのやり取りにただただ笑える平和な場面が続きます。その二人の組み合わせを観ながら「また逢おうと竜馬は言った」のホワイトキャストの伸介さんとカオリちゃんを思い出して一人ニヤニヤしていました。そんな楽しい場面も長くは続かず…最後の最後は本当に目を背けたくなるレベルで、クリスチャンの絶望の叫びに心がぐっと引き込まれました。

またまた舞台が変わった「第三楽章」。田舎のさとうきび畑のなかでの道路の建設現場のお話。音楽は楽しい。みんなで歌うことも楽しい。音痴なんてもともと存在しないし、ただ楽しんで歌えばいいんだ。だからクリスチャンも…クリスチャンは二度の処罰を受けた後で、へこみながらも、仲間の音楽に心動かされ、「曲を作ることも楽器をひくことも歌うことも」禁止されていた中での行動で、三度目の処罰を受けることに。最後の最後、それだけは勘弁してあげてーーー(泣)という気持ちでいっぱいに。この辺りで、近くの方が大号泣しているのにつられて、自分の周りの方も私も鼻ずるずる涙だーだー状態に。

最後の「喝采」。ここの締めは分かったような、分からないような。ここだけもう一度DVDでも観て確認したいところです。なぜだかわからないけど、この辺りで一番泣きました。なんでだろう。だから挨拶まで涙を引きずってしまって。
あーもっかい観たい。

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正直あまり期待していなかったし、2014年再演版のダイジェスト映像で流れる音楽だけで、全体的にのんびりした話なのかな?と思っていたら、全然そんなことなくて。

クリスチャンの抱える陰と、周りの雰囲気と音楽の陽の繰り返しで、なんとも言えない気持ちになりました。心動かされてとにかく泣く!これ観て泣かない人がいるんだろうか、いやーむりむりむり!

あと、自分の持っている才能を物理的には使うことが出来るのに、法律で禁止されていて、それをしてしまったら処罰されるってどういう状態なんだろう、どういう気持ちになるんだろうとずっと考えています。私にしてみれば、クリスチャンほどの天才ぶりではないにしても「文章を書く」ということがそうなのかな。パソコンで文字を打とうとしたら処罰…いや打ち込むのがダメなら音声入力で←…いやこれもたぶん処罰されるんでしょうか。どんな方法にしても、自分の持っている力で人を楽しませたり、励ましたりすることが禁止されるなんて、やっぱりつらいよねーという月並みな感想しか出てきませんが。

あれこれ制約のあるなかで人生を楽しみ、自分以外の才能に触れて戸惑い、人の暖かさに触れ、人に裏切られ、絶望の中でも人生を楽しみ、偶然によって苦しみ、しかし最後に少しだけ救われる(?)クリスチャンの人生。

もうちょっと観ていたい、というかもう一回観たい、キャラメルボックスの中でも最近で一番の作品になりました。DVD出たら買おう。 

 

劇中でみんなが歌う、下のPVでも流れている「シュガーの歌」。

全部観てから聞くと、歌詞の一部にぐっときます。

 

 「人は幸せになるために生まれた」

  

---おまけ---

キャラメルボックスでは、役者さんたちがぼそっという「小ネタ」的セリフが大好きで、(毎回もしかしたら違うのかもしれないけど)今回はクリスチャン(多田さん)の「水素水飲んでくる」と、リンダ(大滝さん)の「プラスあるふぁー」がただただツボでした。

ゲストの石橋徹郎さん(文学座)の役もはまり役でずっと怖い人なのに、最後に「えっ」とびっくり要素があって、オレノグラフィティさん(劇団鹿殺し)も一番多い、一人で5役演じていて、どれもしっくりくるというか、アメリカの設定だから金髪と長身が栄えるなぁと思いながら拝見していました。

 

キャラメルボックスのおススメは?って聞かれたら、今度からこれにしよう。