よむ&みる

本や映画、舞台の感想をつらつら書いています

「推しは推せる時に推せ」とは言うけれど

久しぶりの更新になってしまいました。仕事のストレスと向き合い、引っ越しをしたりして読書をする習慣が消滅しかけていましたが、最近頑張って復活させようとしています。

さて。このブログでは読書と演劇の感想をつらつら書いてきました。
私の演劇生活の中心に来るものは劇団四季や宝塚のような華やかなで誰もが知っているものではなくて、小学4年生の時に心動かされてから、演劇集団キャラメルボックスでした。

そしてこれ。昨年あたりからtwitterでよく見かけた言葉です。

f:id:akinatsukushi:20190603215238j:plain

「推しは推せる時に推せ」

自分の応援している人が、自分の好きなものが、永遠にこの世にあるなんてことはなくて、応援したいと思ったときに、好きだ!と思ったときに素直に、心のままに行動するべきだ、ということですよね。
「本当にそうだなぁ」と思って、特に大好きなモーニング娘。’19は卒業・加入をものすごいスピードで繰り返しているので、オタク度を加速させていたところでした。
そんな矢先。5月31日夜。
演劇集団キャラメルボックスが突然、活動休止を発表しました。

f:id:akinatsukushi:20190603215952p:plain

これが発表されるちょっと前に、劇団初期の代表作、「ナツヤスミ語辞典」を六本木の俳優座劇場で観劇したばかりでした。
キャラメルらしい疾走感と爽快感。新人さんたちの可愛さと緊張感に対する、ベテラン団員さんの安定感と芯の強さ。それをホームの池袋サンシャイン劇場よりもキャパの小さな、距離感の近いところから楽しめるなんて最高!!と幸せを噛みしめて、twitterで出演者の舞台裏話的なつぶやきを楽しんでいました。

 

「推しは推せる時に推せ」。この言葉を見て、推したいものには推せるだけ、気持ちの分だけ推してきたつもりです。何事も永遠ではない事は分かっていても、「推せなくなる」この喪失感はどうしたもんだろうか、と思うわけです。
親友が転校してしまった時ような、大切な人が亡くなった時のような、大事にしていた物を無くした時のような・・・
唯一の救いは、「解散ではない」ということ。活動の休止、であって解散ではない。
劇団の俳優さんたちは、劇団外での活動や、客演での活動も多くて、実績がある人ばかり。

 

芸能人、劇団、本、好きなお菓子、大切な人、どんな「推し」でも、応援したい、好きだ!と思ったら心のままに。この機会にキャラメルボックス以外の劇団さんもチェックしつつ、活動の再開を心待ちにしています。

『探偵が早すぎる(上・下)』(井上 真偽)

探偵が出てくる話と言えば、普通のお話なら「すでに起こった事件のトリックを見破って犯人を見つける」ところですが、今回はそうではなくて「探偵が起こりそうな事件を未然に防ぐために犯人のトリックを見破る」のが面白いところ。

ミステリー小説は最近あまり読んでませんでしたが、本屋さんで表紙の絵とタイトルに惹かれて読んでみました。

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

 
探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

 

 主人公は、父の死によって莫大な遺産を相続した女子高生の一華(いちか)。

その遺産を狙って大陀羅家(だいだら)一族が一華を事故に見せかけ殺害しようと試みて・・・というお話。父は愛人との間の子ども、ということで大陀羅家では隠し子の存在。

「お父さんのものをあの人たちに渡したくない」「お母さんが過労でなくなったのもあの人たちのせい」という思いで、「国を一年守れる」くらいの遺産をどう守るのか。

そこで使用人の橋田が雇ったのが探偵の千曲川光。

刺客の計画した悪事をそのまま意趣返しを果たすのも読んでいてお見事!スッキリ!という感じで、一華の天然&前向きな明るさと対比する橋田の冷静さ、大陀羅一族のクセの強さと、全部が全部面白く、上下巻するするっと読めてしまいました。

 

7月からはドラマ化もされるそうです!びっくり。
探偵の千曲川滝藤賢一さん。一華が広瀬アリスさん。本の中だと千曲川はもっと若いイメージなんだけど・・・こちらも楽しみにしていたいと思います。ぜったい観る!!

www.ytv.co.jp

『さよならのためだけに』(我孫子武丸)

つい先日、twitterの趣味アカウントというのを始めました。
twitterを公開して使うことにドキドキしていたんですが、同じ趣味の人と繋がれるのはやっぱり楽しいし、読書は特に自分が普段目にしないものを見る機会になって幅が広がったような気がします。

 

さて。今回読んだのは『さよならのためだけに』(我孫子武丸

さよならのためだけに【徳間文庫】

さよならのためだけに【徳間文庫】

 

 少子晩婚化が進む中、結婚仲介業のPM社の相性判断で結婚相手を選ぶ世界。最高評価の「特A」でマッチングしたカップルの離婚率は0%というけれど、ハネムーンから帰ってきた水元と妻の月(ルナ)は離婚を決意して…というお話。

 

これまで大昔から続いてきた「男女が結婚するための道のり」ではなくて「離婚するための共闘」がテーマな所がもうすでに面白いし、マッチングによる結婚が義務ではなくて、普通に恋愛して結婚する人も少数ながら存在しているところが「この先こんな世界になる可能性があるのかも・・・」と思わされて、色々考えながら読み進めました。

 

夫の水元は両親がPMのマッチングで結婚した第二世代、月は両親が普通に恋愛をして結婚したこのお話の中では「普通ではない方」の子ども。水元はPMの社員として、相性判断を全面的に信頼していて、一方の月は冷静に捉えて分析して相性判断を全面的には信頼していない。
結婚するってつまりどういうことなんだろうか、遺伝子レベルで相性がいいと判断されれば万事OKなのか、結婚の本質を考えながら、PM社との対決の場面では特に目新しい驚きの展開はないものの話の着地点も納得。対決の部分が長いから、あっさりしたまとめにびっくりみたいな所もありつつ。

結論としては「自分でよく考えろ」「相性判断なんかに甘えるな」ということかな・・・

 

つい先日、演劇集団キャラメルボックスの「無伴奏ソナタ」を観てきたばかりで、
そのお話の設定は「子どもの頃の能力診断で仕事が強制的に決められる世界」でした。この本との共通点は「幸せとはなにか」「人が決めたこと(法律や相性判断など)に無条件に乗っかることがいいのか」というところでしょうか。
もしこの本をすでに読んでいたら、ぜひ無伴奏ソナタも観てみてください。