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本や映画、舞台の感想をつらつら書いています

『さよならのためだけに』(我孫子武丸)

つい先日、twitterの趣味アカウントというのを始めました。
twitterを公開して使うことにドキドキしていたんですが、同じ趣味の人と繋がれるのはやっぱり楽しいし、読書は特に自分が普段目にしないものを見る機会になって幅が広がったような気がします。

 

さて。今回読んだのは『さよならのためだけに』(我孫子武丸

さよならのためだけに【徳間文庫】

さよならのためだけに【徳間文庫】

 

 少子晩婚化が進む中、結婚仲介業のPM社の相性判断で結婚相手を選ぶ世界。最高評価の「特A」でマッチングしたカップルの離婚率は0%というけれど、ハネムーンから帰ってきた水元と妻の月(ルナ)は離婚を決意して…というお話。

 

これまで大昔から続いてきた「男女が結婚するための道のり」ではなくて「離婚するための共闘」がテーマな所がもうすでに面白いし、マッチングによる結婚が義務ではなくて、普通に恋愛して結婚する人も少数ながら存在しているところが「この先こんな世界になる可能性があるのかも・・・」と思わされて、色々考えながら読み進めました。

 

夫の水元は両親がPMのマッチングで結婚した第二世代、月は両親が普通に恋愛をして結婚したこのお話の中では「普通ではない方」の子ども。水元はPMの社員として、相性判断を全面的に信頼していて、一方の月は冷静に捉えて分析して相性判断を全面的には信頼していない。
結婚するってつまりどういうことなんだろうか、遺伝子レベルで相性がいいと判断されれば万事OKなのか、結婚の本質を考えながら、PM社との対決の場面では特に目新しい驚きの展開はないものの話の着地点も納得。対決の部分が長いから、あっさりしたまとめにびっくりみたいな所もありつつ。

結論としては「自分でよく考えろ」「相性判断なんかに甘えるな」ということかな・・・

 

つい先日、演劇集団キャラメルボックスの「無伴奏ソナタ」を観てきたばかりで、
そのお話の設定は「子どもの頃の能力診断で仕事が強制的に決められる世界」でした。この本との共通点は「幸せとはなにか」「人が決めたこと(法律や相性判断など)に無条件に乗っかることがいいのか」というところでしょうか。
もしこの本をすでに読んでいたら、ぜひ無伴奏ソナタも観てみてください。